大西康明の初期作品「ガワ(環)」は内側の木材を焼き捨て、それらを覆っていた鉄を作品化したものだ。それは、インスタレーション的様相を見せる近年の彼の作品とは異なり、彫刻科出身者の作品らしい外観を呈している。しかし、本展企画者に向かって大西が放った「残骸を見せる」という言葉を手掛かりにすれば、彼の作品を貫ぬくものが見えてくるだろう。初期作品は言うまでもなく、大西の代表作「体積の裏側」においても、接着剤で吊られたポリエチレンシートは、制作時に下に置かれていた物の表面をかたどっているという点で残骸と言えるからだ。燃焼、そして重力による垂下などの現象を味方に、大西の手がつくり出す造形物は空間を支配する。しかしその根本には彼が学んできた彫刻についての批評がある。大西の作品は彫刻や空間の概念を軽やかに転換させつつ、その場に足を踏み入れた者の知覚を翻弄する。
1979年大阪府生まれ。2001年筑波大学芸術専門学群美術専攻卒業、2004年京都市立芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。2007年第10回岡本太郎現代芸術賞展太郎賞受賞。
近年の主な個展に、2011年「体積の裏側」(愛知県美術館)、2012年「reverse of volume RG」(Rice Gallery、アメリカ)、「Inner Space」(ウィルフレッド・イスラエル美術館、イスラエル)がある。近年の主なグループ展に、2009年「HOME」(国際芸術センター青森)、2010年「Art Court Frontier #8」(アートコートギャラリー、大阪)、2011年「世界制作の方法」(国立国際美術館、大阪)、2013年「dreamscape -うたかたの扉」(京都芸術センター、京都)、「六甲ミーツ・アート 芸術散歩2013」(六甲オルゴールミュージアム他、兵庫)、「Mono No Aware. Beauty of Things. Japanese Contemporary Art」(エルミタージュ美術館、ロシア)がある。
ONISHI Yasuaki
1979 Born in Osaka, Japan
2001 BA, Carving and Modeling Course, School of Art & Design, University of Tsukuba, Japan
2004 MA, Sculpture Course, Graduate School of Art, Kyoto City University of Arts, Japan