川辺ナホの活動の基盤は映像制作にある。だから映像作品はもちろん、炭の粉を床に撒くインスタレーション、球体のインスタレーション、写真作品など作品の形態が変わろうとも、川辺の作品には揺れ動く光と影そして視覚と記憶への問題意識が内包されている。たとえば2011年に東京で発表した、インスタレーション「調和的だけど不公平」。色とりどりの小さな球体を綿密な計算と緻密な作業を経て天井から吊った本作は、そこに光が差し偶然が重なったときのみ、球体の影が形を結び、ひとつの言葉を描き出す。球体が意味するもの、光が意味するもの、影によって現れる言葉が意味するもの。いくつもの意味の層が重なり合いながら、川辺の作品は私たちの目を欺き、そして目には見えないものを意識させるのだ。本展では、福岡市美術館の特殊な空間を生かした、複数の作品が緩やかにつながるインスタレーションが発表される。
1976年福岡県生まれ。1999年武蔵野美術大学造形学部映像学科卒業。2006年ハンブルク美術大学芸術学科ディプロマコース修了。2009年文化庁平成21年新進芸術家海外留学生、2012年boesner art award 2012審査員特別賞受賞。
近年の主な個展に、2011年「オープン・シークレット」(資生堂ギャラリー、東京)、2012年「ブリューテンシュタウブ」(port gallery T、大阪)2013年「オブザーバー・エフェクト」(ギャラリー・ヴァッサーミューレ、トリッタウ、ドイツ;ギャラリー・ドゥ・タブロー;マルセイユ、フランス)がある。近年の主なグループ展に、2009年「Twinism大阪・ハンブルク友好都市提携20周年記念事業現代美術交流展」(クンストハウス・ハンブルク、ドイツ;AD&Aギャラリー、大阪)、2010 年「Versus Whiteout as The Bee to Bee Net」(クンストハウス・ハンブルク、ドイツ)、「Moving Surface」(Künstlerforum Bonn)、2012年「Out of Place」(ギャラリーすずき;アンテナメディア、京都)など。
KAWABE Naho
1976 Born in Fukuoka, Japan
1999 Graduated from the Bachelor Course at Visual Communication Design from the College of Art and Design at Musashino Art University, Tokyo
2006 Completed the Diploma Course at University of Fine Arts, Hamburg, Germany